1st ピアチューター養成講座

Peer Tutor Training Program

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1st ピアチューター養成講座

  • 平成30年12月23日(日)〜24日(月)の2日間、北九州学術研究都市にて宿泊研修を行ないました。講師は九州大学 基幹教育院 教授 三木 洋一郎先生で、この講座の目的はグループワークを活性化させる高校生チュター、つまりピアチューターを育成することと、参加者に“学び方、探究方法”を知ってもらうことです。

参加した高校生からは、

  • 自分では思いつかなかったようなことも、グループのメンバーひとりひとりが考えたもの同士が組み合わさったり、他のメンバーが考えたものをその他のメンバーが連想したりすることで、新しい考えが出てきた。(高校2年 女子)
  • 中学の理科で学んだこと、高校の地理で学んだ知識が活用でき、授業の大切さが分かった。(高校3年女子、高校2年女子)
  • 新しい学び方に気付かされました。自分たちで課題を見つけ出して、それを解決するために何が必要なのかを話し合い、その課題について調べ議論をするPBLは主体的な学びの実践例だと感じ、PBLのキーワードは「自分たちで学ぶ」ということだと感じました。
  • 合宿では、普段の学校の授業とは違う学び方で、受け身ではなく能動的に取り組む内容だったので、とてもやりがいを感じました。また、自分の考えを発表することや相手の考えを聞くことに楽しさも感じられました。(高校2年 女子)
  • ピアチューター養成講座を受けて思ったことは、問題を基盤にすることで、勉強の楽しさだけでなく、大学や社会での応用が可能であるということが分かり、PBLの重要性が実感出来ました。(高校3年 男子)

と感想が寄せられています。どのようなプログラムを行なうことで、このような生徒の感想が得られるのでしょうか。
このページでは、そのことに対する私たちの見解と研修の内容を掲載します。

概要
この講座の目的は、ピアチューターとして活躍したいと考えている生徒さんに、PBLチュートリアル(PBL=Problem-Based Learning、問題基盤型学習法)について理解してもらうことです。2日間の構成になっていて、第1日は、PBLチュートリアルの進め方について説明したあと、実際にPBLチュートリアルを実践してもらいます。グループ討論を通して自分たちで学習課題を設定し、個々に調べ学習を行います。第2日は、再びグループで、調べ学習で得た知識を共有し合いながら、前日の課題を解決します。さらに、新たな課題に基づいて、第3日(別日程)に向けた準備をします。

プログラム
Day1 :12月23日(日) 於)北九州学術研究都市 技術開発交流センター

① アイスブレイク
合宿のアイスブレイクとして、福岡大学 商学部 田村 馨教授から教えていただいた「なぜなぜワーク」を行ないました。「自分はなぜ今ここにいるのか?」を起点とし、そこからたくさんの“なぜ”を作ってもらいました。さらに、午後のチームビルディングに向けて、「ラベリングワーク」を行ないました。各自、「なぜなぜワーク」で出てきたキーワードを用いて自己紹介文を作成しました。

② チームビルディング
参加者9名を2班に分け、チームビルディングを目的に他己紹介を行ないました。まず、各自で“最近で一番印象的な出来事”を絵に描いて、チームメイトに説明しました。次に、チームの代表者がチームメイトの描いた絵を1枚ずつ全員に説明しました。

③ レクチャ
PBLとは何か、PBLチュートリアルの進め方について、講師の三木教授よりご指導いただきました。内容はYouTubeにて公開しております。

④ PBLチュートリアル:セッション1
あるシナリオに基づき、グループ討論を行い、自分たちで学習課題を設定しました。チューターとして、三木先生と西田がグループに入り、生徒たちの学びに伴奏しました。

おおよそ50分程度、まずはシナリオから事実を抽出し、発散的議論をしながら事実に関する仮説を立てました。さらに、NTK(Need To Know: 理解が足りない点、知識が必要な点)をピックアップし、優先順位をつけて、数項目の学習課題に絞り込みました。

その成果がこちらのホワイトボードに現れています。

  • Group1

  • Group2

各グループが抽出した学習課題は以下の通りです。
Group1:「地球温暖化:天候が生態系に及ぼす影響は何か」「メコン川の水の発電ダムが湖に与える影響は何か」
Group2:「水力発電ダムがトンレサップ湖に及ぼす影響:水力発電ダムの構造、メリット・デメリット、造られた目的、湖以外の地域、生態系、環境への影響」

セッションの締めくくりとして、1人ひとり口頭によるふりかえりを行いました。その後、夕食までの1時間程度、各自、自分たちの学習課題について、図書館や携帯電話を使用して調査、探究しました。

⑤ アクティビティ1:こんな時どうする?
この講座(宿泊研修)は、第一の目標として、参加した高校生を、授業などのグループワークを活発にするピアチューターとして育成することです。Day1最後のアクティビティ1では、グループワークを困難にしているいくつかの事例に関するケーススタディを行い、どうすればその問題を解決出来るのか意見を出し合いました。

プログラム
Day2 :12月24日(月) 於)北九州学術研究都市 技術開発交流センター

⑥ 調べ学習
Day1 PBLチュートリアル セッション1で設定した学習課題を、約2時間図書館や携帯を使用して調査、探究しました。

⑦ PBLチュートリアル:セッション2
それぞれが調べ学習で得た知識や情報を説明し合って共有し、シナリオに対する具体的なイメージを膨らませました。

⑧ PBLチュートリアル:セッション3
グループとしての解決策を議論し、ポスターにまとめました。

  • Group1

  • Group2

⑨ PBLチュートリアル:セッション4
班ごとにポスターを発表し合い、質疑応答や、ポスターの違いや共通点を議論しました。その後、各自、相手チームのプレゼンに対して(1)自分たちのプレゼンテーションにはない最も優れている点〈1件〉、(2)疑問点/問題点/分かりにくかった点〈いずれか1件〉をフィードバック用紙に記載し、交換しました。

Group1が受けたフィードバックの内容

⑴自分たちのプレゼンテーションにはない最も優れている点
・政治的な面を考えていたところ。
・タイトルのつけ方:問題の本質がわかりやすく、関心をひく。
・簡潔にまとめられているところ。
・しっかりした外交対策がまとめられていた点。
・項目ごとに簡潔に説明している。

⑵疑問点/問題点/分かりにくかった点
・中国との協定を結ぶことについて。
・要因について、地球温暖化の説明が欲しい。具体的にどう解決するのかを知りたい。
・解決策の例や説明がもう少し欲しかった。
・中国に協定を調印させるために、中国の利益と引き換えにするものを知りたい。
・解決策を講じるとどうなるか、解決策をどう講じるか具体的に知りたい。

Group2が受けたフィードバックの内容
⑴自分たちのプレゼンテーションにはない最も優れている点
・原因の根拠がはっきりしていて分かり易かった。
・住民の意識改善を取り上げている点。
・原因の分析と説明が分かりやすい。解決策も具体的になっている。
・水質汚染のメカニズムまであったので想像しやすかった。原因のところが詳しかったので分かりやすかったです。奇魚が生まれた理由や実際にあったことを言っているので良いと思いました。
・原因をたくさん細かく抽出していること。
・北九州市の具体例があって良いと思いました。

⑵疑問点/問題点/分かりにくかった点
・政府の無関心さはどう改善していくべきだと考えますか?
・住民の意識改善は、最も優れている点であり、疑問点でもあった。政府が動くから住民の意識が変わることもあると思う。
・原因の説明に時間をかけすぎた点。時間配分。
・原因が深かったので一言付け加えて書いた方が良いと思いました。
・説明が細かすぎてあまり入ってこなかった。
・違法漁業の対策はどうするんですか。

⑩ PBLチュートリアル:セッション5
相手チームからもらったフィードバックシートすべてに目を通した後、1人ひとり口頭によるふりかえりを行いました。

ふりかえりでは、以下の意見が出ました:
・みんな原因など細かく調べられたし、意見も多く出し合えたが、原因など細かいところに時間をかけ過ぎて、ポスターを作る時間配分にしても、発表にしても、全体を見渡せていなかった。はっきり、簡潔に、でも的確にまとめられたらもっとよくなると思う。
・原因はしっかり調べられたが、解決策を調べるには時間が足りなかったので、水質改善の中でもさらに方向性を絞ってやれば良かった。全体的に手を出しすぎて、一貫性がなく、取捨選択に課題があった。最初に全体を見て、行き過ぎた議論や矛盾点を探せば良かった。
・今日改めてシナリオを読んだが、今日のグループワークを始める時にしておけば、問題点、現状分析、解決策、その後というものを明確に出来たと思う。
・みんなが役割分担して、自分たちが調べたことを詳しく言い合えたので良かったと思う。また、水質改善について調べていくうちに、たくさんの問題があることが分かり、環境問題は本当に複雑だと思った。

⑪ PBLチュートリアル:セッション6
SDGsに関するシナリオをもとに2回目のPBLチュートリアルセッションを行ないました。今回は、Group1に西田、Group2に三木教授がチューターとして入りました。Day1で学んだPBLの流れを実践し、シナリオから事実の抽出、仮説の立案、NTK(理解が足りない点、知識が必要な点)のピックアップ、最重要課題の設定を行いました。

その成果がこちらのホワイトボードです。

  • Group1

  • Group2

Group1は、「項目ごとにどのくらい達成されているのか」
Group2は、「これまでどのような物資供給がされ、必要な技術はなにか」「世界市民として必要な意識や行なわれるべき教育はなにか」「世界にはどのような差別があるのか」

を最重要課題とし、その調査と探究を3月開催予定のDay3までの宿題としました。

⑫ 総括・リフレクション
三木教授より、PBLのグループワークを行なう上で有効なグランドルールについて解説していただいた後、最後に一人30秒ずつ、2日間のふりかえりをコメントしてもらいました。

高校2年生 女子
この合宿に参加するまではグループワークより個人ワークの方が良いと思っていたが、今回のようにみんなと交流して、意見を出し合うことによって、すごく考えが深まり、自分が知らない知識を入れることもできた。
自分が出した意見を、他のメンバーがどんどん発展させてくれたり、相手の意見から自分の考えが深まったりする時の嬉しさを本当に感じ、グループワークは本当に大切なものだと感じることができた。

高校2年生 男子
一つ目の課題を出された時に、何からすれば良いか分からなかったが、事実を読み取り、仮説、NTK(必要な知識)、学習課題を見つけるという手順が分かりやすかった。
その後みんなと調べ、その課題に対しての理解を深めたり、問題点を見つけたりすることの難しさと楽しさも実感出来て良かった。このことを次に活かして頑張っていきたい。

高校2年生 男子
この2日間で、自分の考えを発言する難しさと、言葉に変えて書く難しさを知った。ディスカッションする時も、自分の基礎知識がないとディスカッションに入れないので、自分の基礎知識を増やせるように、これから勉強していきたいと思う。基礎知識を増やせるのは共創学部だと思うので、そこに向かってこれから受験勉強をしていきたいと思った。

高校3年生 女子
2日間で良かったのは、学校で得た知識や、講演会などに参加して得た知識がテーマと繋がっていて、無駄ではなかったと思えたことだ。自分の課題は、自分の意見を伝える時に、的確に簡潔に言えなかったところと、時間配分が出来なかったことで、次回参加する時にはこのことを目標に参加したい。

高校1年生 女子
この2日間を通して、自分に足りないところがまだまだあると思ったので、そこを補えるように、これから改善策を見つけて取り組んでいこうと思った。
また、ディスカッションするということを、甘く見すぎていたと思いました。相手に意見を伝えることは、普段なら得意なこともあったが、知らない人もたくさんいて、自分の意見を積極的に出せないところがあった。
今後は人のことを気にしすぎず、自分の意見を発することができるように、ディスカッションの機会を増やして練習していこうと思った。

高校3年生 男子
この2日間非常に有意義な時間を過ごすことができて、関わってくれたみなさんに感謝している。このPBLという方法を学んだこれからが大事だと思うので、これからも自分で活用しつつ、この手法を広めていけたらいいと思った。

高校3年生 女子
アイデアが浮かんだり、探していた知識が見つかったりしても、そのことをみんなに伝える時に、上手く伝えることが出来なかった。今回いろんな人たちと話すことで、自分の考えの甘さや出来ていない点、改善点がみつかったので、こういうような経験をこれから積んで行こうと思った。

高校3年生 女子
私は小論文を書くことにしても、考えることがあまり得意ではなく、どこから手を付ければいいのか分からなくなることが多かった。しかし今回PBLの手法を学ぶことで、個人でもそれを活用して、考えを深めて、良い文章をかけるようになりたい。

また、今回いろいろな人とセッションをしてみて、自分の知識不足を痛感したので、これからもっと知識を増やしていきたい。

高校2年生 女子
この2日間、PBLのプロセスを通して、仮説からNTK(必要な知識)を考えることをこれまでやったことがなかったので、PBLのチューターに相応しくなるためにも、個人で教養を身につけるためにももっと学んでいきたいと思った。

三木先生より
知識は結果的について来るものというのがPBLの考え方で、発散的に議論をすることで、他の人の観点や知識を吸収できるし、別のアイデアが生まれてくるものだと思う。
日頃からアンテナを張っていろいろな知識を取り入れることはもちろん大事だが、PBLはディスカッションを楽しむものだということを、頭と心に入れておいてくれればよい結果に結びつくのではないかと思う。
これから皆さんがますますこういうことができるようになることを期待している。Day3でまた会いしましょう。

コーディネーター西田より
参加した高校生と同じく、僕もこのPBLという学び方に価値を更に感じました。特に探究学習の導入に活用しやすいのではないかと思います。その際重要となるのはチューターの力量とシナリオの質、コーディネーターと参加者・参加者同士の信頼関係だと思います。まずはピアチューターの育成を行なうことで、生徒の学びの質を高めるお手伝いをしていきたいと思います。1期生のみなさんの教室での活躍に期待します。