久藤さん聞き書き作品

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久藤さん聞き書き作品

一般社団法人オーガニックパパユニティ
代表理事 八尋 健次さんへのインタビュー聞き書き

[はじめに]
私は放課後の黒門塾での探究活動で、環境破壊を止めるために、地球に優しくエコなバイオガス発電と農業との兼ね合いは出来ないかと思い、実際に農家をされている八尋健次さんにお話を伺う事にした。コロナ禍の中でzoomを使ったインタビューだったこともあり、初めての経験で戸惑っていたが、西田さんと八尋さんは長いお付き合いだと聞き、少し安心してインタビューを始めることが出来た。

[本文] 八尋さん『』 久藤 「」
zoom内に八尋さんがお入りになった。
『おはようございますー!よろしくお願いしまーす!』
「香椎高校1年の久藤です。本日はお忙しい中ありがとうございます!」

緊張していたが最初の挨拶ですごく気さくな方そうだなと思い、少し緊張がほぐれた。最初に西田さんが主旨を説明して下さり、私に交代して本題に入った。何から説明しようかと戸惑ったが落ち着いてゆっくり話した。

「えっと、まず私は放課後の寺子屋で環境問題について探究しているんですけど、その中で環境問題の原因になってるものってなんだろうって考えていたんです。そうしたら、石炭を使った発電とか、化石燃料を使った発電は二酸化炭素を排出してしまうので、それが地球温暖化に繋がったりして環境破壊に繋がってるのかなっていう考えをしてたんです。」

すごくたどたどしい話し方になってしまい、とても申し訳なさを感じていたが、八尋さんは『うん。』と言ってとても真剣に私の話を聞いて下さった。

「それでも発電はしないといけない訳で、じゃあ何か化石燃料を使わずに発電する、そんな発電方法はないかなと考えました。そしたら、再生可能エネルギーを使った発電があることを知りました。でも風力や太陽光を使った発電は天候に左右され、安定した発電ができないというデメリットがあるので、他に何か環境に優しくて天候などにも左右されず安定した発電ができる方法はないかと調べたら、バイオガス発電という発電方法を知りました。この発電を使えば環境問題をちょっとでも無くせるんじゃないかと思いました。それで、バイオガス発電を使って、何か、ビジネスというか、私達にとってプラスになるような事は出来ないかと考えた時に、バイオガス発電をした後に消化液というものができるんですけど、その液がすごく土とかに良い成分を含んでいるらしくて、だからその液が農業する上で肥料になったりするんじゃないかと思って、農業とバイオガス発電を近くで一緒に行えば発電した後の消化液を農業に活用出来ると考え、それについてちょっとお話を伺いたくて… はい。」

本当に話し方が下手くそで、すごく申し訳なかった。しかし八尋さんは優しく答えてくださった。

『はい。使えますよ。バイオマス発電の後に出てきたものは畑に使えます。』

「使えますか…!よかったです…」

使えると知ってすごく安心したし良かったと思った。

「土地的な問題とかも出てくると思うんですけど、そのような兼ね合いは出来ると思いますか?」

『うん、まぁ技術が進めば。色んなやり方で。畑自体がバイオマス構造になっていることはすごくいいことだと思います。理想的です。ただ、コストがかかりすぎてなかなか進んでません。でも周りにいなくはないですよ、現実的に言えばですね、木材の樹皮を使ったり、色々なバイオマスの活用は既にあってます。ただコストがかかるので十分に進んでないけど。でもたった10年後には相当進んでるんじゃないですかね。どこででも出来ると思いますよ。』

「そうですか!よかった…。ありがとうございます。やはり、コストはかかりますよね…それは私も思っていました。」

『安くて出来るシステムもあると思います。農家の規模にもよるけど、5000万以下だろうね。やっぱり年商の半分位でできないと、広まっていかないだろうね。』

『なるほど、やはりコスト面などの問題もあるから、農家さんの規模とかにもよって、この方法が広まっていくかは、ちょっと分からないという感じですかね…』

「そうねぇ。まぁそこで売電できることが1番大事なので、5000万〜1億の範囲でできる設備がたくさん何百箇所も何千箇所も広がっていくことが現実的な感じがするね。(バイオガス、バイオマス発電は)システム自体は簡単なので、是非農業界全般で広がって欲しいと思います。」

やはりコスト面などの問題でなかなか広がるのが難しいことが改めて感じられた。

『そうですよね…あの、発電した後に出る消化液が土に良い成分を含んでいるそうで、農業をする上で肥料になると思うんですけど、現在使われている肥料で、デメリットなどはありますか??』

『デメリットだらけですよ。』

「え、そうですか…」

正直すごく驚いた。現在使われている肥料がそんなにもデメリットだらけなんて、どうゆうことなのだろうかと。

『現在日本中で使われている99%以上の肥料は、デメリットだらけです。』

「どのようなデメリットですか?」

『んー、デメリット感が1番強いのは、日本で何も出来ていないということかな。日本の原料で何も出来てない。100%輸入に依存してる。貿易が止まると日本での生産物ができない。食べ物は日本人の生命、生きていくとは食べることなので、貿易が止まっただけで日本人は滅亡します。まるで鎖国をしていたことが嘘かのように、今の現実では農家が1人も減らなくても、農地が1平米も縮まなくても、貿易が止まるだけで日本人は食べる物を失うことになります。それがリスクとして1番怖いかも。それが1つですね。』

いつ貿易が止まるかなんて分からないのに、それだけで私達日本人は滅亡してしまう。とても恐ろしく感じた。

『それと、今使ってる肥料は農薬とセットです。その成分は硝酸態窒素と言います。簡単に言えば火薬のような成分です。虫も引きつける、病気も引きつけるリスクがあります。植物自体を簡単に大きくできる、というメリットもあるから使われているんですが、同時に健康被害を起こす可能性があります。化学肥料とか農薬使うことによって、虫や病気を引き付けたり、体に良くないデメリットがあります。これが2つ目ですね。
他にもたくさんあるけど、致命的とも言えるデメリットですね。今すぐにも肥料を変えないといけないことは大きな課題としてあります。
ちなみにバイオマス(バイオガス)から排出される廃棄物を使うと、使い方に工夫はいるものの、このような問題は起きません。とても良い肥料になると思うし、未来の循環型の農業はそのようにして構成されるべきだと思います。ゴミも出さないし、化石燃料にも頼らないし、農家が継続的にやっていくことにも繋がる。それを食べる人達の安全にも繋がる。全てがいいことですので、進めばいいなと思ってます。』

「なるほど…」

すごく難しい問題だと感じたし、化学肥料が怖くなった。

「八尋さん御自身は、バイオガス発電自体についてのようにお考えになりますか?」

『うちはねー、ちょっとこだわりが強い農業をやってて、バイオマス(バイオガス)を使わなくても、肥料そのものを使ってないというね、肥料も使わず野菜を作るという、かなり特殊なやり方をしてます。ただ、それは旬の野菜や旬の果物しか出来ません。でも旬は長くても5ヶ月とか6ヶ月位で終わるので、あと1年の半分は旬が無いということになります。例えば玉ねぎが1年の半分しか無かったら、カレーライスは1年の半分しか食べれないっていう風にになっちゃう。それが良いか悪いかはまた別の問題として、当社は非常に偏った農業をしていて、そもそも肥料というものを全く使わないので、バイオマスを活用していないというのは現実です。じゃあみんなうちの真似をすればいいんじゃないか、というのは、大きなデメリットは、1年中収穫出来ないことです。日本人全体で食習慣を変えなきゃいけない。まぁ昔に戻るということになるんだけど。頑張って収穫しても、それでも3ヶ月はジャガイモ収穫出来ない、カレーライスは3ヶ月食べれない。ってなったら耐えれますか?』

「耐えられません(笑) 私カレーライス好きなんです。」

『はは、(笑) そうゆう風になっちゃうんだけど、まぁそれは別の問題ですが。そんなことになったら大ブーイングですよね。いつかこれはまた別として学んで欲しいことなんだけど、人が健康に暮らしていく上で、旬を守るっていう。日本は世界一旬を破っているというか、先進国の中でも稀です。発展途上国では旬を守らざるを得ない食習慣だけど、先進国の中でも日本は一年中何でも食べれるっていう国なので、これが良いか悪いかって言われたら別の問題だけど、それが出来なくなるような農業なので、まぁバイオマスエネルギーを使う事で、一年中食べれる農業には繋がるのでいいいと思います。もっと百点満点なのは、食習慣から変えないといけない。』

「ありがとうございます…」

【食習慣を変える】事が百点満点だということ、とてもびっくりした。まさか私達の食習慣が良い農業をしていく上で関連しているなんて思ってなかった。

「肥料などを一切使わないという農業をされてるとおっしゃいましたが、その、有機農業?というのは具体的にどのようなものなのか教えて頂けますか?」

『地球環境に負荷をかけず、持続可能な農業の構造の事を言うんだけど、それは同時に人間にも負荷をかけないというテーマもあってその地球環境に負荷をかけず、また人間の健康に被害を及ぼさず、地域性があったりとか、なんだろうなぁ、大きな機械をどんどん使ってやるというよりかは色んな方が参加できるとか、そうゆう意味合いを持ったことが、有機農業の根源です。ですから今やってる非有機農業、実は99.5%は非有機農業なんですね、でもそれは持続可能でないし健康被害を及ぼしたりする。今は有機農業に切り替え中なんですね。そうねぇ、簡単に言ったら、化学合成農薬や、化学肥料を使わない、と言うのが有機農業です。』

「ではそのような有機農業を行うことが出来たら、地球にも優しいし、人間にも被害を与えないという、全てにおいて良い農業ができるということでしょうか?」

『そうです。普通にコンビニで買い物して、有機農業で作られたものは99.5%口に入らない、というのが現実なんですよ。それ以外は全部地球にダメージを与え、人体にダメージを与えるものを食べてるのが日本人です。そんな知られてない恐ろしい事が日常的に起こっていることも事実です。ですから、再生可能エネルギーの課題から直結はしてないけど、新しい課題として、日本の食の問題は世界でかなり悪い。そこを学んで貰えたらいいなと思います。』

「はい!あの、先進国の中で日本は特に旬を破っているとおっしゃいましたが、他の先進国や日本じゃない国では、やっぱり日本よりも有機農業とか進んでるんでしょうか?」

『全く比較にならない数量で進んでます。んー、例えば健康に関心のなさそうなイメージがある、アメリカでさえどんどん進んでます。他の国もずっといい方向に進んでいます。日本には色々な問題があります。まず、旬を守ると売れない。食べたい時に食べたい物を我慢出来ないというか、健康被害があっても旬を破りたい民族なんですね。日本では普通だよね。でも、イギリスに行ってもドイツに行っても、日本ぽい韓国でも、そんな事はありません。世界の中で一年中季節感が無く、旬を全く無視して何でも食べれる民族は世界で恐らく日本だけです。だから旬に合わせるっていうのはどんな国でもしてます。そもそも不自然な食習慣、戦後ですよ。戦前は春に春のものを食べ、夏には夏のものを食べ、秋には秋、冬には冬のものを食べてました。それ以外のテクニックが無かったから。化学肥料が無かったから。でも今の日本はこうなってしまった。興味があればその分野も勉強してみてください。』

「はい。日本がこのようになってしまったのは経済的な事が関係しているのですか?」

『まぁー、日本がお金持ちだからそうゆう農業が出来る訳で、豊かな事がデメリットになった結果ですね。』

豊かな日本故に、化学肥料などを買えて現在の農業が進んでいる。これが有機農業が進まない原因なのだと分かった。

「有機農業があまり広がっていない中で、なぜ八尋さんは有機農業を行おうと思ったのですか?」

『まぁ、いるものはいるしねー、僕は代々の農家だから、次に農業を伝えていく訳だけど、未来に残していく農業が色々なデメリットを抱えている、それを伝承していく虚しさ、一年中何でも食べられる夢のような国なった日本だけども、成人病、贅沢病と言われる病気は世界一多いんですよ。こんなに多い国もない。豊かさ故に、健康被害を起こしている。そうゆうものを伝承して終える訳にいかないので、思い立って、実践して、技術を蓄えて、それを配って回ってます。』

「ありがとうございます。」

本当に八尋さんは日本の食習慣、農業を少しでも良くしようと考えてらっしゃる素晴らしい方なんだなぁと思った。

「すみません、話がまたバイオガスの話に戻ってしまうのですが、その、八尋さん御自身はバイオガスとは関係の無い農業をされているとおっしゃっていましたが、有機農業とバイオガス発電の兼ね合いは出来るでしょうか?」

『あのー、相性は良いですね。再生可能エネルギーは天然のもの、自然のものを使うことが多いので、有機農業という農業ができる資材なので、とても相性は良い。ただ、日本で発電プラントを作る、タービンを回す工程の熱源も活用しようとしたら、要は冬に暖房を焚いて夏の野菜を作ったりすることになります。そしたら、有機農業は出来ないです。だからもう一歩踏み込む価値はあるけど、その時にさらなる工夫があって、健康に野菜を作るにはどうしたらいいかとかいう意識も兼ね備える必要はあると思います。でも、基本的には可能です。』

「ありがとうございます。」

「では、最後の質問なのですが、今後バイオガス発電や有機農業など、地球に優しい、環境破壊に繋がらないような発電法や農業方法を広めていくためにはどうすれば良いでしょうか?」

『若い子達が、まずそこに強い意志を持って参入してくる事が必要です。テレビコマーシャルでも2人に1人が癌になるとか成人病との戦いを日常的にしないといけなくなった日本だけど、その根本に食習慣っていうのがあります。そうゆう社会を未来に残していきたくないのであれば、食習慣を今すぐにでも変える必要があります。だからもっと、未来に長くいる子達がちゃんとしたものを食べる、世界全般にそうゆう風潮があったほうがいいよ、って思ってもらうしかないと思います。思い立てば誰でも出来ます。若い子達は今から選べるので、有機農業をいち早く広める。変えることが出来るとしたら若い子達の力だろうね。法律とかも出来てるんですよ。どんどんどんどん有機農業は国をあげて推進されているので、あとは意識が変わるだけです。技術もあるし。だからそうゆう事に関心を向けてこれからの人生を歩んで欲しいです。』

「はい… ありがとうございます。以上で質問は終了です。お忙しい中本当にありがとうございました!!」

『いえいえ〜、頑張ってくださいね!』

こうしてインタビューは幕を閉じた。

[感想]
とても緊張したし、私の質問の仕方などは良いとは言えなかったと思うが、無事に終了出来てよかった。インタビュー後西田さんと少しお話をしたが、有機農業の話に逸れていたように見えて、実はそれは私達が探究している事と繋がっている事が分かった。本当に驚いたことだらけだったし、たくさんの事を知れて、とても良い経験が出来たと思う。今回の経験を別の探究活動にも活かしていきたいし、学んだ事をしっかり心に刻んでおきたいと思う。また、日本人の食習慣についてもっと知る必要があると感じた。